W杯報告と脳震盪の段階的復帰プログラム(GRTP)

9月21日、22日と札幌ドームでラグビーW杯が行われ、グランドドクターとして従事してきました。 幸い大きなケガは発生せず、終了できました。 「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」というキャッチコピーをよく耳にしますが、まさに一生に一度の体験をさせてもらいました。

ラグビーW杯が日本で行われると決まってから、グランドドクターとして仕事ができればとこれまでさまざまな講習会や試験を受けてきました。 それが実現できて、無事終わり、ほっとしています。 トップ選手の大きさやパワー、スピード、衝撃を目の前で体感できました。 ただグランドドクターをしていると、試合展開はあまり楽しめませんので、残りの試合をスタジアムやTVで観戦して楽しもうと思います。

さてW杯を観戦されている方も多いかと思いますが、時折選手が一時退場して、また出てくることをみたことはありませんか? ケガでの交代以外に、ラグビーでは脳震盪のチェックのための一時交代がルールとして認められています。 脳震盪を疑うようなプレーが起こった場合、選手の安全を第一に考え、10分間退場して脳に異常がないか調べるものです。 TVではHIAという言葉が出てくるかもしれません。 「Head Injury Assessment」の略です。

ラグビーは見ての通りハードなスポーツですが、その分安全面にはとても配慮されています。 実際W杯では選手のサポートしてグランドサイドに4人、医務室に5人の医師が配備されていました。 整形外科、脳神経外科、内科、歯科医などです。

ラグビーは、タックルなど身体と身体が接触する際にはパワーを競う場面ですので、細かな反則はありません。 しかし悪質なタックル(空中にいる選手へのタックルや、スライディングのようなタックル、首より上へのタックル)は危険プレーとして重い反則が課せられたり、一時退場となったりします。 コンタクトと呼ばれる、力や技術を競う場面です。 また身体の接触が多い分、競技上のルールがきちんと定められており、それをしっかり守るから、きちんとスポーツとしてなりたつんです。 その分みていてルールがわからなく、とっつきづらい理由です。

激しい接触をする競技ですが、試合が終わるとノーサイドといって、サイドに分かれて戦っていたサイドがなくなり、お互いの健闘を称え合います。 ルール内で正々堂々しっかりと戦い、メリハリをつけること、ラグビーが紳士のスポーツと言われる所以です。

さて脳震盪に話は戻りますが・・・ 脳震盪が発生すると、一定期間脳は衝撃に弱い状態となります。 そのときに、再度脳に強い衝撃が加わると、後遺症が残ったりします。 そのためのHIAのチェックですし、W杯に限らず、これはすべての年代のラグビー選手でもあてはまることです。

また脳震盪と脳内出血は画像検査をしないと判断がつかないことも多いです。 したがって脳震盪の症状をしっかり把握した上で、起こってしまったらしっかり検査をすることが必要です。

大人では、脳震盪後最短で1週間で試合復帰できますが、中高生は復帰までに最短でも3週間かかります。 そして3週間の中でも、少しずつ運動強度をあげていって、身体に異常がないか確認しながら、少しずつ運動強度をあげていきます。 それが年代ごとにプログラムが決まっていて、タイトルのような段階的復帰プログラムといわれています。

この段階的復帰プログラムは、可能であれば、医師の診断・評価をうけた上で、運動強度をあげることが望ましいとされています。 そして診断書をラグビー協会へ提出して、やっと試合に復帰できることになります。

ただ北海道ではラグビー人口もそれほど多くないですし、ラグビーのルールに従って選手をしっかりみれる医療施設もほとんどないのが現状です。 そのため脳震盪が発生しても選手がどこの病院を受診したらよいかわからず、路頭に迷うことが多く発生しているようです。 当院ではそのようなことがないよう、そして選手が安全にラグビーに復帰できるように、脳震盪後のチェックや診断書作成などお手伝いをしていきたいと思います。

しかし脳外科ではありませんので、脳外科で頭部CTなど検査をして、頭部に問題がないと診断されたのちに、段階的な復帰のお手伝いをしたいと思います。 リハビリ室も大きいですし、復帰にあたり身体の接触練習をしたりすることもできると思っています。

脳震盪の復帰プログラムをしっかり守ることも、ラグビーのルールの一つと考えます。 ラグビーを長く、楽しむためにも、しっかりとチェックを受けた上で、試合復帰をしましょう。 当院では全力でそのお手伝いをしたいと思います。