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超音波(エコー)による乳児股関節検診

みなさん、乳児に生じる股関節脱臼ってご存知ですか?

実は日本人は人種的に、股関節脱臼を生じやすいんです

人工股関節が必要となる方には、股関節脱臼が関与している場合がほとんどです

1970年代は2〜3%と言われていた股関節脱臼の生じる頻度が、近年出生時の指導などが普及し、その発生率は減ってきて0.2~0.3%と言われています

でも北海道は全国的にみても発生率は高い方なんです(理由はまた別の機会にご説明します)

頻度は減ったとしても、現在でも股関節脱臼に気づかずに成長して、2〜3歳になって気がつくという子がいるもの事実です

股関節脱臼は、発見が早ければ装具治療で、後遺症なく成長することができますが、発見が遅い場合は、入院・手術が必要であったり、歩行の後遺症が生じてしまったりするんです

また発生頻度が減るとともに、股関節脱臼に対する認識が薄れてきたり、整形外科医の中でも股関節脱臼をしっかり診察できない医師も増えてきているようです

現在札幌市では、4ヶ月の健診で、股関節のチェックが小児科で行われています

そこで股関節脱臼などが疑わしい場合に、整形外科へ紹介されて、診察をすることになっています

さてどんな症状があったら股関節脱臼を疑ったらよいのでしょうか?

それはオムツ交換のときのいわゆるM字開脚で、脚が開きづらい場合などが要注意です

股関節脱臼があり関節の適合性が悪いと、可動域が少なくなり、脚が開きづらくなります

また症状が軽い場合は、脚を開くときに、カクっとずれる感じが出ることもあります

もし気になる症状がある場合には、健診よりも前に相談してください

治療は早ければ早いほどよいんです

股関節脱臼は、生じやすいリスク因子がいくつかあります

あてはまるお子さんは注意が必要ですし、健診前に整形外科に相談されてもよいと思います

そのリスク因子は・・・

1 上記にかいた開排(オムツ交換などでの脚の開き)の制限がある

2 太ももの皮膚のシワが左右で異なる(シワの数、位置、深さなど)

3 家族、親戚に股関節脱臼の方がいる

4 女の子

5 骨盤位(頭が上で脚から出てきた)で生まれた(帝王切開時の体の向きも含む)

の5つです

1が当てはまればすぐ受診をおすすめしますし、2〜5のうち2つあてはまる場合にも受診がすすめられます

近年北海道で股関節脱臼の調査をしている大学の先生に伺うと、男の子でも家族歴がある方は要注意とのことでした

さらにいうと秋冬に生まれた子は要注意です

では整形外科ではどんなチェックをするのでしょう

これまでは診察とレントゲン検査が一般的でした

上が乳児で、下が大人の股関節のレントゲンです

乳児の股関節はまだ骨が発達していないので、股関節のボール部分はほとんどが軟骨です

軟骨はレントゲンには映りませんので、実はレントゲンでのチェックはすごく曖昧なんです

あきらかに脱臼している場合はレントゲンでわかりますが、わずかにずれているような場合ははっきりしないことが多いです

そこで登場するのが、超音波検査、いわゆるエコー検査です

エコーは近年すごく進歩して、体の中が詳細にわかるようになりました

軟骨も見えますし、数mm単位の位置関係もわかるので、乳児の股関節検査には適しているんです

でもそこには大きな問題が・・・

エコーをあてた経験がないと、どれが正しくて、どれが悪いかわからないんです

一般の人がレントゲンをみて、どんな形がいいか悪いかがわからないように、新しい検査であるエコーは整形外科医誰もができるものではありません

私も股関節のエコーはずっと習得したい技術でしたが、その機会になかなか恵まれずにいました

今回札幌でエコーセミナーが開催されたので、クリニックを休診にさせていただいて参加して、2日間みっちりと講習を受けてきました

実際のボランティアの乳児さんでエコー経験も積ませていただきました

泣いて動く乳児ではやはり難しいですが、大丈夫!と自信が持てるようになりました

北海道でエコーで股関節検診ができる施設はまだまだ少ないですが、今後絶対に普及する分野だと思っています

正確に股関節脱臼を評価することで、見逃しを防ぎ、正しい治療をすることでお子さんの障害を減らすことへつなげられます

お子さんが将来元気に走り回っている姿をイメージしながら、今回得た知識を活かしていきたいと思っています

当院はオムツ替えスペースも完備していますし、キッズスペースも確保しています

当ビル2階には授乳室もあります

予約システムを導入していますので、待ち時間も短く診察できるかと思います

 乳児股関節検診の案内はこちら↓

股関節脱臼の心配があるお子さんがいれば、ぜひご相談ください

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